ちば しろう
講師の仕事は営業活動を必要としません。それは、自分自身が行う講義が営業だからです。受講者に、楽しかった、また聞きたい、あっという間に時間が過ぎた等の感想を持っていただければ、それがアンケート結果となり、必ず次の仕事につながります。私は営業活動を一切しないFPを自認しています。
私は将来、先生のように講師活動を中心にFPとして独立したいと考えています。講師としてやっていくためには、どのように勉強しどのような点に注意したら良いでしょうか?
以下、私の考える重要点を上げてみます。
(1)目線を下げる。
セミナーでは知識レベルがさまざまな人が出席しています。どの水準に話を合わせるかがポイントになります。通常は人数の多いレベルに合わせます(アンケートの結果を考えていますから当然です)。ただし、少し易しいかなと思うくらいの話がちょうどいいですね。社会人だったら大学生レベル、大学生だったら高校生レベルといった感じですか。
つまり、講師の言っていることが良く分かるといった感想を持たせるためです。
(2)相手の反応を見ながら話す
講師の1人舞台ではだめです。話しながら相手の反応に十分注意を払い、修正を何度も繰り返すことになります。
(3)事前準備を入念に行う
以前にも申し上げましたが、講義時間の3倍程度が理想です。何をそんなに準備するかといいますと、セミナーのシナリオを作成し、肉付けをしていく作業の後、ここでこのような理解度を示す受講者であればこうするが、そうでなければこういう話に修正していくなど分岐点を設定することを行います。なぜかというと、私のようなプロ講師は一発勝負だからです。つまり、主催者側が良いと思えば次の仕事がきますし、悪いを思えばそれっきりということです。敗者復活戦はないのです。
(4)寝かせない
企業研修での評価で共通している点は、参加者が寝るようではダメということです。実は、これが一番苦労することです。人間は長時間話を聞いていると、どうしても眠くなります。講師は人間の生理現象と戦うことになります。ポイントは眠くなる時間を想定し、興味深い話を連続して機関銃のようにたたみかけるのが最も効果的です。
(5)延長しない
許容範囲は5分です。これができない講師が多いので、私が飯を食っていけるとも言えます。参加者には終了後の予定があります。また、主催者側にも予定があります。これを無視して延長すると、どんなに良い話をしてもすべておじゃんになります。先日、某所で○○協会の相談員研修がありました。講師は非常に話が上手く、さすがだなあと思いながら聞いていましたが、20分も終了時間を超過してしまいました。これはチャンスだなあと思い、終了後周囲の参加者数人に「今日の話どうでした?」と聞いてまわってみました。案の定、半数以上が「つまらなかった」という答えでした。本当に、いい話だったのに.....
私はこれを勉強するために、よく寄席に落語を聞きに行きます。寄席では最初は前座、そしてだんだんと有名な人に順に話をしていきます。彼ら前座といえども話のプロです。予定時間を1分たりとも延長しません。さすがです。
なぜ、私が『独立』をすすめるのか?
それは『独立する』ことによって、サラリーマン生活では決して得ることができない大きなものを得ることができるからです。
おおげさに言えば、人生観・価値観が変わるということになります。
私もサラリーマン生活を15年ほどやってきましたが、みなさんと同じように、朝は満員電車に乗り、帰りは残業で疲れて帰宅する、寝たと思ったらすぐ朝が来て、また1日が始まるといった生活の繰り返しでした。
たまの憂さ晴らしと土日の休み、そしてお昼ご飯だけが唯一楽しみでした。このような生活を延々と続けていたわけですが、表面上は優等生のような顔をしながら、内心は毎日毎日いやでいやでたまりませんでした。
決められた時間働き、拘束・管理される、上司や部下・同僚との人間関係に気を使い、休暇を1日もらうにも嫌味を言われるような環境、しかしその代償として安定した給料がもらえる。
これが多くのサラリーマンの現実でしょう。
このことに何の疑問をもたない人もいるのでしょうが、疑問を持ちながらいやいやサラリーマンを続けている人も多いのではないでしょうか?
『会社に就職したら、頑張って働き、偉くなる』
これがサラリーマンの王道かも知れません。
しかし、そのためにはらう犠牲がいかに大きなものか。このようなことをあまり真剣に考えなければサラリーマン生活も楽しくやっていけるのかも知れません。
しかし、多くの人がサラリーマン生活にかなりのストレスを感じており、病気になったり、命を無くす人も少なくありません。
『サラリーマンは気楽な稼業』
は昔の話、私はサラリーマンほど大変な職業はないと考えております。
なぜ、サラリーマンが大変かといえば『自分を殺す』ことにより成り立っている
社会だからです。
自分の言いたいことを抑え、周囲と協調すること、上司の言うことはご無理ごもっとも、ごますりやおべんちゃらも仕事のうち、自分や家族の生活のためには自分を曲げなければなりません。
まさに『白を黒だと言わせる世界』
が会社というものです。『白を白であると主張する人』は基本的にやっていかれません。
では、今の会社がいやでいやでたまらない人の多くは、なぜサラリーマン生活を続けているのでしょうか。
会社を辞めてしまえば、このような生活から開放されます。
『でも生活はどうするの?』そのとおりです。
日本の企業社会は終身雇用制度の上に成り立ってきました。能力主義などといわれてきていますが、まだまだその域には達していません。能力を評価する人間に能力がないという現実がそうです。
終身雇用制度は崩壊したものの、いったん会社を辞めて自分の能力を認めてくれる会社に再就職しようとするには、さまざまな障害が待ち構えています。
求人数が少ない上に、学歴・職歴重視、年齢制限等々、これを乗り越えて再就職するのは至難の業であるともいえます。
日本の企業社会は『いったん会社を辞めたら、容易に再就職できない』のです。
私が会社を辞めたのは38歳の時でしたが、ご多分にもれずまったく仕事がありませんでした。
とすれば、どうしたらいいのでしょうか?
会社にこのまま居続けて、家畜のように飼いならされる道を選ぶか、自分で食い扶持を稼ぐかの2つしかありません。
少々いやなことも我慢して会社にいれば、家族も含めてある程度の生活が保障されます。しかし、自分で稼ぐとなるとかなりのリスクを背負うことになります。
『仕事が取れなかったら?病気をしたら?ケガをしたら?老後は?.....。』
際限がありません。どちらを選ぶかはみなさんご自身の問題です。
『私は?』
私は独立を選びました。というか、独立せざるを得なかったといったほうがいいでしょう。
就職先もなく、自分で稼ぐしか方法がなかったからです。
しかし、会社を辞め自分で稼ごうとするようになってから、今までとは大きくものの見方が変わったような気がします。
自分でお金を稼ぐということは簡単なことではありません。仕事がまったくないような時には、不安で死にたくなるような思いもします。
逆に、忙しいときには月に朝から晩まで28日も働き、過労死するのではないかと思うこともあります。しかし、死にません(笑)。
『サラリーマンだったら、とっくに死んでいるであろう環境でもなぜ大丈夫なのか?』
それは無駄なストレスがないからです。満員の通勤電車で会社に通う、上司の顔色をうかがう、理不尽なことで叱責される、付き合いで飲みに行かされる、同僚から足を引っ張られる、部下に反抗される、上司が帰るまで帰れない、休暇を取りづらい......一切ありません。
独立するということは、自分が自分の主人になることです。『自分がやりたくないことはやらなくていい。やりたいことで頑張ればいいんだ』ということです。
生活の安定という大きなものは犠牲にしますが、そのかわりさらに大きな自由を手に入れることができるのです。
サラリーマン生活しか知らなかった自分にとって、これはとても衝撃的な事実でした。
私は元来無宗教の人間なので、魂や生まれ変わりなどということは信じられません。
人間は死んだら腐ってしまうだけだと考えています。
死んでしまったら同じこと、いやなことを我慢しながら一生を送るよりも、やりたいことをやる道で生きていきたいという気持ちが私のどこかにあるのでしょう。
これからFPで独立を考えている人は多いでしょうが、なかなか現在の生活を変えることに踏み切れない方がほとんどだと思います。
『独立する』ためには、『独立してしまう』以外に方法はありません。
片手間にというのは絶対におすすめできません。自分で稼ぐのはそんなに甘いものではありません。ある意味で命がけになります。
命がけになることによって、人様に満足していただける仕事ができるのであり、生計を立てていく道につながるのだと私は考えています。